家計調査ランキングから長崎市の家計支出に関する特徴を確認する【Part2】
前回の投稿で、次は家計調査ランキング(=都道府県庁所在市と政令指定都市(以下、「各県庁所在市」)単位のランキング)において長崎市が「『金額』のランキングが高位で『数量』のランキングは低位」の品目を見てみることにしていましたが、少し回り道をして、まず、「魚介類」に分類されている品目から特徴的なものを見てみたいと思います。
海産物が豊富なイメージのある長崎県は、その漁獲量が日本第3位です。(AI、ここではCopilotによると2021年度の漁獲量ランキングで長崎県は北海道、茨城県に次いで3位とのこと)
最初に、家計調査のランキングで「魚介類」に分類されている品目を見てみると、長崎市が上位5位に入っている品目は下の表の通り「ぶり」、「あじ」、「かまぼこ」の3品目となっています。
「かまぼこ」は「数量」のデータが公表データになく「金額」のみとなっていますが、「ぶり」、「あじ」、「かまぼこ」のいずれもが、私が長崎に帰省したときに美味しく食べている魚介類として思い浮かぶ品目です。
次に、「魚介類」に分類されている品目のうち、長崎市が下位5位(48位〜52位)に入っている品目を見てみると下の表の通り「まぐろ」、「しらす干し」の2品目となっています。
「しらす干し」のランキングが下位なのは、そのランキング結果よりも家計調査の品目に「しらす干し」が含まれていることの方に驚く程度ですが、何と言っても目がとまるのは「まぐろ」です。
私は、社会人になってから関西で暮らすようになりましたが、それまで「まぐろ」に対して高級、美味しいというイメージが自分の中に乏しかったことを今でも覚えています。
その感覚が長崎(を含む九州)で自分が育ったことで、「まぐろ」を身近に感じることが少なかったことがその理由だったのではないか?と思わせるランキングになっています。
もちろん、私が長崎で過ごしたのは30年以上前のことであり、このランキングは2021年~2023年の家計調査の1世帯当たり品目別年間支出金額と購入数量(二人以上の世帯)の平均ですので、まったく異なる時期のことになります。
そう考えると、家計調査の結果が時の経過とともに、どの程度、変化しているのか?ということが気になります。
ということで、「政府統計の総合窓口(e-Stat)」を使って、長崎市の家計調査(2013年~2023年)における主だった4品目(まぐろ、ぶり、みかん、カステラ)の金額の推移をグラフ化したのが次のグラフです。
上のグラフから、長崎市の家計調査では、「ぶり」に対する支出が「まぐろ」に比べて一貫して多いことが分かります。(一番下の折れ線が「まぐろ」です)
また、「みかん」に対する支出の堅調さや「カステラ」に対する支出が2020年以降、2019年以前の水準に戻ろうとしていることも確認できます。
長崎市の特徴をより理解するために「政府統計の総合窓口(e-Stat)」を使って神戸市のグラフも作成しました。
上のグラフから、神戸市の家計調査では、「ぶり」に対する支出が「まぐろ」に対する支出に近いことが分かります。(「ブリ」の下の折れ線が「まぐろ」です)
また、「みかん」に対する支出が「ぶり」に対する支出を上回る年があることや、神戸市の「カステラ」に対する支出が長崎市の「まぐろ」に対する支出と同じレベルであることも確認できます。
「金額」のランキングが高位で「数量」のランキングが低位の品目
では、回り道を終えまして、家計調査において、長崎市が「『金額』のランキングが高位で『数量』のランキングは低位」となっている品目を見てみたいと思います。
私の目にとまったその品目は、「生鮮野菜類」に分類されている「キャベツ」です。
家計調査の長崎市の「キャベツ」のランキングは次の通り「金額」は1位、「数量」は37位となっており、2つのランキングが大きく異なっています。
その上で、公表されているデータをもとに「キャベツ」の単価のランキングを作成しました。
単価の上位(=単価が高い)を記載した左側の表から長崎市の「キャベツ」の単価のランキングが2位であることが分かります。
また、下位5位(48位~52位)を記載した右側の表から最下位(最安値)の前橋市の「キャベツ」の単価に比べて長崎市の単価が約1.5倍であることが分かります。
このように大きな差があるデータからは、その理由を考えることを促すものを感じます。
そして、上位5位の各県庁所在市の顔ぶれを見る時、上位5位の県庁所在市は「キャベツ」の育成環境に適しておらず、決して軽くはない「キャベツ」を生産地から上位5位の各県庁所在市へ運ぶコストが必要となるため、結果として「キャベツ」の単価が高くなっているのではないか?と推測されます。
そこで、AI(ここではCopilot)に「キャベツを生産地から消費地へ運ぶコストの要因」を尋ねたところ、次の回答でした。
生産コストの現状:
untitled (maff.go.jp)
キャベツ栽培の農業経営費において、「包装荷造・運搬等料金」および「農機具・農用自動車・建物」の2つの費目が全体の約5割を占めています1。
夏取りの場合、病害虫防除に多くの費用が投入されており、冬取りでは肥料が高い割合を占めています。
生産コストの低減には、包装資材の低減、農機具の効率的利用、フェロモントラップの利用、堆肥の自家生産などが効果的です。
AI(ここではCopilot)は上記の回答に加えて、「労働時間削減の鍵」や「具体的な取組」についても合わせて答えてくれましたが、ここでは割愛しましょう。
ここから考える物語
ここまで、家計調査結果をもとにした幾つかの品目のランキングから長崎市の市場の特徴を見てきました。
たしかに「カステラ」や「みかん」、「ぶり」、「あじ」、「かまぼこ」、「キャベツ」など、「金額」または「数量」が上位にランキングされている品目を見ることは、供給者(生産者)の視点から見た時に価値のある長崎の市場の特徴を見て取ることに通じるのだと思います
一方で、消費者としての視点から見た時に価値のある長崎の市場の特徴を見て取るためには、「単価」のランキングが低位であることが大事なのではないかと思います。
「みかん」のように「数量が上位で金額が下位」の品目は結果として「単価」が安いため、みかん好きの移住希望者にとって、長崎は移住先として適地だと考えられるのではないでしょうか。
一方で、「キャベツ」のように「金額が上位で数量が下位」の品目は結果として「単価」が高いため、キャベツ好きの移住希望者にとって、長崎が移住先として適地だとは考え難いかも知れません。
ただ、ココで私がおもしろいと思うのは、移住希望者が自らを「消費者」としてではなく、自らを「供給者」または「生産者」として捉え、そこから取り組む対象として「みかん」や「キャベツ」を見た時、その景色はまったく逆に見える可能性があるのではないか?、ということです。
つまり、もし「キャベツ」の生産について豊富な知見を有する人が長崎へ移住した場合、今の長崎の「キャベツ」市場の全国的にみて高い単価を是正するような試みが出来る場として、長崎を捉えることが出来るのではないでしょうか。
もちろん、ここで「みかん」や「キャベツ」と呼んでいるのは比喩、メタファーでもあって、これまで都会地で様々な経験や知見を涵養し、それらを有する人が地方都市への移住希望者となり、実際に地方都市へ移住する際に、このようなデータを使って考え判断し、新しい市場を拓くことができれば、移住者にとっても、移住先にもともと住んでいる人にとっても素晴らしいだろうな、と思うのです。
次回の投稿では、Part3として、家計調査ランキングの「外食」や「食料品以外」に分類されている項目について見てみたいと思います。
コメント