長崎県の市町に関する考察とそこから考える物語

公的オープンデータを使って、移住先 長崎について考える。 データ+移住への物語

「長崎県のどこへ移住したいのか?」について考える際の基礎データ

長崎への移住を検討するとき、その内容や優先順位は人によって、または、家族によって異なると思います。
ただ、長崎への移住を検討する多くの方の検討内容に、次の①と②は含まれているのではないでしょうか。
①自分(自分たち)は、長崎のどこへ移住したいのか?
②自分(自分たち)は、長崎でどのような仕事に携わるのか?
今回の投稿では、上記①について考えてみたいと思います。
上記①については、「自分は長崎県のこの市(または、この町)へ移住したい」という思いが先にあって、長崎への移住を検討する方が多いのかも知れません。
ただ、「自分(自分たち)が移住したい市(または、町)」がすでに決まっている方にとっても、まだ決まっていない方にとっても、長崎県の各市町が、どのような特色を持っているのかについて知ることは、面白いことだと思います。
そこで、まずは長崎県を構成している21の各市町(13の市+8つの町)を人口が多い順番に並べ、人口が多い上位5市を黄色にした表を作成しました。(「政府統計の総合窓口 e-Stat」から取得した2020年度の人口)

長崎県下21市町の人口

次に、高齢化率が高い順番に長崎県の21市町を並べた表を作成しました。
(「政府統計の総合窓口 e-Stat」から取得した2020年度の人口)

長崎県下21市町の高齢化率

上の2つの表から、長崎県の21市町の中で人口が多い5市のうち、大村市のみが高齢化率が20%台であることを確認できます。
ただ、この2つの表を見るだけでは、長崎県の各市町の人口の多寡を実感することが難しいため、いま、私が住んでいる神戸市灘区と長崎県で人口が多い上位5市の人口密度を比較してみました。

長崎県下5市と神戸市灘区の比較

この表から、長崎県で人口が3番目に多い諫早市の人口が、神戸市灘区の人口とほぼ同じ13万人台であることを確認できます。
では、人口がほぼ同じ諫早市と神戸市灘区の人口密度は、どうなっているでしょうか?
上の表から、諫早市の総面積が神戸市灘区の約10倍(可住地面積は約15倍)であるため、諫早市の人口密度は神戸市灘区の人口密度の約10分の1となっています。
これらのデータから単純に諫早市の街並みをイメージすると、集合住宅と戸建住宅が密集している神戸市灘区に比べて戸建住宅が多く、生活移動手段として車が不可欠な街並みが思い浮かびます。
次に、上の表において、長崎県で人口の多い上位5市を比較したとき、次の3点を確認できます。
①諫早市の可住地率(=可住地面積/総面積)が最も高い。
 (可住地率が最も低い長崎市の約1.3倍)
②諫早市の人口密度が最も低い。
 (人口密度が最も高い長崎市の約40%)
③人口が3番目に多い諫早市の人口密度は、人口が4番目に多い大村市の約半分。
この確認結果を見ると、各市町の人口や人口密度に影響を与える「転入者数」と「転出者数」がどうなっているのかが、気になります。
そこで、長崎県の各市町の「転入者数」-「転出者数」を算出し、その値が小さい順(値がマイナスの市町は「転入者数」よりも「転出者数」の方が多い)にしたのが次の表です。
(「政府統計の総合窓口 e-Stat」から取得した2021年度の転入者数と転出者数)

長崎県下21市町の「転入者数-転出者数」

この表から、2021年度の「転入者数」が「転出者数」を上回った市町は、大村市と諫早市の2市のみであったことを確認できます。
また、これまでに確認したデータから私が興味深く感じるのは、諫早市の人口密度は大村市の人口密度の約半分である一方で、諫早市の2021年度の転入超過数は大村市の転入超過数の約40%に留まっていることです。
では、大村市と諫早市の「転入者数」と「転出者数」の過去からの推移に違いはあるのでしょうか?
「政府統計の総合窓口 e-Stat」を使って、1996年度~2021年度の大村市と諫早市の「転入者数」と「転出者数」の推移を取得したのが次です。

諫早市の転入者数と転出者数

上のグラフから大村市は、2009年度以降、継続して「転入者数」が「転出者数」を上回っていることを確認できます。

諫早市の転入者数と転出者数

上のグラフから諫早市は、2021年度にほぼ初めて「転入者数」が「転出者数」を上回ったことを確認できます。

ここから考える物語

先月(2024年5月)、「諫早市 独自の都市計画区域へ 隣接自治体との枠組から離脱」というニュースが流れました。
報道の概要は次のようなものでした。
①諫早市では大手電子部品メーカーなど企業の進出や大型商業施設の立地が進む一方で、市内では宅地の供給が不足気味で、若者の流出などが課題となっている。
②そのため、諫早市は現在、長崎市や長与町など2市2町が同じ「長崎都市計画区域」として都市計画を進めている枠組みから離脱し、諫早独自の「都市計画区域」を設けて柔軟な都市計画を進める。
③新たな「都市計画区域」では、建物の建築を制限する「市街化区域」と「市街化調整区域」の区分を廃止して、土地利用の自由度も高める。
上記①は、上で確認した諫早市の2021年度の「転入者数」が「転出者数」を上回った事実等と符合しているように思います。
また、諫早市が本年3月に策定した「第2期 諫早市まち・ひと・しごと創生総合戦略 改訂版」では、基本目標2の数値目標 として「2025年度までに転入・転出者数を均衡させる」ことが謳われていますので、2021年度以降、「転入者数」が「転出者数」を継続して上回ることを諫早市が目標としていると考えられます。
では、その目標を達成するための方法とされている上記②③の諫早市独自の「都市計画区域」を設けること、特に「市街化区域」と「市街化調整区域」の区分を廃止することが、目標達成のために有効な方法なのかどうかという点に関心が向きます。
そこで、上で見てきた通り、長崎県下で唯一、継続して「転入者数」が「転出者数」を上回っており、諫早市の次に人口が多く、諫早市よりも人口密度が高い大村市の都市計画を確認したところ、大村市は「市街化区域」と「市街化調整区域」の区域区分を定めていない「非線引き」の都市計画区域でした。
ということは、諫早市は自らを、大村市と同じ「非線引き」の都市計画区域とすることなどを通して、転入者数を増加させることを目指しているように推測されます。
ココで私が面白いと感じるのは、長崎への移住を検討する人(または、検討している人)がきっと確認したいと思うであろう、このような長崎県の各市町の特色や政策動向に加えて、今回の投稿で掲載したようなデータや根拠(引用元を含む)を同時に簡単に知る術がないように思われることです。
そのため、私が確認したデータを投稿し、共有することで、これから長崎へ移住することを検討している方の役に立てたらいいなと考えています。
また、私の掲載したデータに対する意見や、あなたが長崎への移住を検討される上で、確認したいと思われるようなデータについての要望をいただけると嬉しいです。

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